ミニマム創内視鏡下手術の概要
ミニマム創内視鏡下手術の概要についてご紹介します。
以下に示す図は典型的な例であり、実際の創の大きさなどは、患者さんの状況によって異なります。
● 本手術は、CO2ガスを使わず、対象臓器を取り出すミニマム創のみで完了しようという手術すなわちガスレス・シングルポート手術です。腹膜を損傷しない後腹膜アプローチで行います。腎癌の根治的腎摘除は、その特徴をよく表していますが、腎は下図のように取り出されます。
● 本手術の低侵襲手術における位置付けを下図に示します。
気腹をせずに、単一のミニマム創から、腹膜を温存して行なう手術です。
● 低侵襲で、安全で、経済性が良く、環境にも優しい手術と捉えられます。高価な使い捨て器具が少なく、きわめて高価な機器(ロボット支援機器など)も使用しないため低コストであり、費用対効果の良い手術と言えます。
● 具体的な手順は、初めに対象臓器を取り出すミニマム創をつくり、ここから解剖学的剥離面を展開して広い術野(working space)を腹膜外に作ります。内視鏡は創から挿入して拡大視と全員での観察を行い、必要ならば術者は創からの直視も併用することができます。また、患者さんの状況に合わせて創の長さを適宜調整して、安全を担保することができます。
● 内視鏡を含めた器具は全て、下図のようにミニマム創から挿入されます。様々な器具が工夫開発されました。基本的に安価な器具であり低コストになります。
● 実際の手術の様子ですが、上図で示したミニマム創すなわちシングルポートを作り、そこから器具を挿入し、手指は挿入せずに手術操作を行います。このような手術であるため、予防的抗菌薬は不要あるいはごく少量で十分です。
● 本手術は、通常、2種類のミニマム創のいずれかを用いて行います。骨盤より上にある副腎、腎、上部尿管は腰部のミニマム創から、膀胱、前立腺、下部尿管などの骨盤内臓器は、下腹部正中のミニマム創から手術を行います。患者さんの状況により、創の位置やサイズは変わることもあります。それぞれの基本となる手術は、根治的腎摘除(腎部分切除)と前立腺全摘除です。
● 2つの基本手術のうち、腎摘除(腎部分切除)の写真は上に掲出しましたが、前立腺全摘除は次のようです。
● 典型例では、前立腺は下図のように摘出されます。
● 本手術は後腹膜アプローチであるので、腹腔内の強い癒着が想定される例でも適応になりえます。この例は4回の開腹手術の既往のある患者さんです。
● 2つの基本手術が行えると、ほぼ全ての泌尿器科臓器のミニマム創内視鏡下手術を行うことができますが、さらにこの手技を手術困難例にも応用することで(改変法)、広汎な低侵襲化を実践することができます。本手術はこのような効果的な教育体系を持った手術です。
● 根治的腎摘除の応用として、典型的な副腎摘除は下図のように行われます。
● 根治的腎摘除の応用として、腎部分切除は典型例では下図のように行われます。5p前後の創から腎を部分切除し、切除した組織を手術中に半切して十分な切除縁を確認します。
● 根治的腎摘除の応用として、典型例では腎尿管全摘除は下図のように行われます。上部の5p前後の創と下部の4p前後の創を用いて行い、腎尿管の一部をつけて、下図のように摘出されます。
● 前立腺全摘除の応用として膀胱全摘除は、下図のように行われます。
● 改変法を用いると、困難例を含めたほぼ全ての開放手術を低侵襲化することができます。改変法は具体的には、2創、medium創、経腹膜アプローチ、創のスライディング及びこれらの併用です。
● 大きな後腹膜肉腫の例(medium創と経腹膜アプローチの併用)
● 隣接臓器に浸潤した腎癌の例(medium創と経腹膜アプローチの併用)。腎は脾臓や膵臓の一部とともに摘出。